DeNAキュレーションメディア問題について

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1 DeNAキュレーションメディア問題の概要

 

DeNAが運営していた,キュレーションメディアの内容が不適切であったということが大きく報道されています。

 

キュレーションメディアというのは,他のサイトや他の書籍などから情報を集めてきて,それをわかりやすくまとめたウェブサイトです。

 

有名なのがNAVERまとめ,などですね。

 

キュレーションメディアの全てに問題があるわけではないのですが,

今回のDeNAが運営していた,キュレーションメディアに限定していえば,たしかに問題が大きかったようです。

 

問題点は,こちらのサイトにまとめられています。

 

 

とくに,WELQという医療情報サイトは,大変に問題が大きかったようです。

自殺関連のキーワード検索に対して,

「自己分析をしたうえで転職をしましょう」

という内容の記事が表示されていたとのことです。

 

2 DeNAキュレーションメディアの何が問題なのか?

では,DeNAには,どういう問題点があったのでしょうか。

問題点は2つあると思います。

 

1つ目は,とくに医療情報などについて,ウソの内容を含む記事を大量に公衆の面前にさらしたことです。

 

医療関係の情報というものは,やはり,通常の情報とは異なるところがあります。

たとえば,「この服がいい」「この靴がステキ」というような,ファッションに関する情報には,かりにウソ,やらせがあったとしても,せいぜい,「広告にだまされてしまって,いらない商品を買ってしまった」という程度のことに過ぎません。

 

ところが,医療関係の情報について,ウソの情報を公衆にさらした場合,それを信じた人は,最悪の場合には死ぬかもしれません。

インターネットの普及以前から,よくあるのは,「医者が見放したガンが治ります!」という,広告を出して,ニセのクスリを売り付けるという商法です。

こういう商法などは,本当にガンが治ると信じた人が,ニセのクスリに期待するあまりに,病院に行く機会を失ってしまって,ガンが悪化して死ぬことがあります。

 

そのため,医薬品については,過剰な効果効能を述べることは,薬事法で禁止されているのです。

医薬品等の広告規制について 厚生労働省

今回,DeNAが薬事法違反をおこなっていたのかどうかは,まだわかりません。

しかし,法律違反があったかどうか,ということよりも,医療関係の情報について,ウソの情報を大量に公衆に垂れ流していたということ,その方が本質的な問題です。

 

自社の利益を追及するために,ウソの情報によって,結果的に迷惑をする人,ウソの情報を信じて健康を害する人のことを,全く考えずに行動をしたということ,その方が本質的な問題です。

 

もちろん,私は,「ネットに書いてあることが全て真実でなければならない」「全ての情報は出所をあきらかにしなければならない」とは思いません。

そういう「情報管理」をしたがるのは,独裁者の考え方です。

インターネットとは,相いれません。

ウソや間違いもある,玉石混淆性がインターネットの楽しさのひとつです。

 

しかしながら,キュレーションメディアというものは,情報をまとめて,わかりやすく公衆に提示して,それによって,アクセスをかせいで,広告収入にする,というビジネスモデルです。

 

そうすると,サイトに来てくれる方は,お客様です。

自社に利益をもたらしてくれる,ありがたいお客様です。

それにもかかわらず,とくに医療情報について,ウソの情報を読ませるという行為は,自分のお客様に毒を食わせてお金を取るのと同じことです。

 

3 DeNAの今回の事件の視点

ですので,DeNAのおこなった,とくに医療関係のウソ情報の提示については,薬事法に違反するかどうか,という小さな観点ではなく,

「ウソの医療情報を提示することによって,利益を上げていた」という構造そのもの問題を考えないといけません。

 

病気の比喩をあげますと,

ガン細胞は,ガン細胞単体では,たいした悪性はありません。

しかし,ガン細胞に「血管」が接続されると,血管により送り込まれる栄養分をもとにして,ガン細胞が爆発的に増加します。

 

ネット上の情報も同じことがいえます。

ウソ情報は,それ単体では,たいして影響力はありません。

しかし,ウソ情報に「広告収入」という利益が配分されることになると,ウソ情報を書いてネット配信することで,爆発的にウソ情報が蔓延することになります。

 

では,「ウソ情報で利益を出すこと」ができるとしたら,その先には,どういう未来があるでしょうか?

ウソ情報で,みんなが儲けることができて,ハッピーになるでしょうか?

 

そうではない,と思います。

人間社会は,歴史的に,人間社会にとってジャマなものを抹殺してきました。

人間社会に仇なすものを排除することにより,社会を防衛してきたのです。

古くは,人類の敵である猛獣を抹殺し,病原菌を抹殺し,マフィアや暴力団を抹殺してきました。

「ウソ情報で利益を出すこと」が,広くおこなわれるようになれば,人間社会は,必ず,「ウソ情報で利益を出すこと」を抹殺しにきます。

つまり,国家によるインターネット上での情報管理,情報の規制です。

将来的には,ひょっとしたら,ウェブサイトを開設することが「許可制」「認可制」になってしまうかもしれません。

 

アフィリエイトをブログに貼るときには,役員の査察を受け入れないといけなくなるかもしれません。

 

もちろん,それは,好ましい未来ではありません。

ネット表現の自由を根底から抹殺するものです。

 

しかし,人類の歴史は,「抹殺した方が望ましいものは抹殺する」という行為を繰り返してきたのです。

 

4 まとめ

DeNAの,今回の問題行為は,大企業が本気になって取り組むと,「ウソ情報で利益を出すこと」が可能になる,ということを世間に知らしめました。

 

おそらく,これを,人間社会が許容できるか,できないかは,ギリギリのラインかもしれません。

許容できない場合には,国家によるインターネット上での情報管理への道が開ける可能性があります。

 

その意味では,今後の展開が注目されます。

なお,DNAの問題行動の「2つ目」については,おって書きたいと思います。

この記事を書いた人

yoshida

香川県高松市の弁護士 吉田泰郎法律事務所です。JR高松駅徒歩5分。あなたが話しやすい弁護士をめざしています。

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