(前号までのあらすじ 私は事務所の顧問先の会社の海外子会社での横領事件の調査のため,タイで子会社社長のK氏と行動を共にしました。)
K氏は,とても決断力のある方であり,こういう不正事件の摘発には,もってこいの人であったでしょう。
今回の私の使命は,タイの子会社での不祥事事件の顛末を報告することですので,いろいろと案内してもらえました。
まず,前社長の妻を逮捕したタイの警察署に行って,話を聞くことができました。
「それにしても,タイの警察というのは,とんでもないところですよ」
と,K氏は言います。
「タイの警察に,あいつを逮捕してくれと言いに行ったら,警察が逮捕するためには,積極的に協力するためのお金が必要だ,と言うんですよ」
それは……ワイロとは言いませんか?
と思うのですが,当時の東南アジア諸国は,公務員がなにかにつけてワイロをとるのは,わりと当たり前のことだったようです。
ひとつには,公務員の給料が非常識に安く抑えられているため,ワイロをとらないと,そもそも生活が成り立たない,という事情があったようです。
警察署についたところ,K氏が,どのように私を紹介したのかわかりませんが,わざわざ日本から弁護士が来たということで,担当者の方が,歓待してくれました。
がっちりと握手をしてくれて,警察で把握している,今回の横領事件の詳細を教えてくれました。
前社長の妻は,すでに横領罪として裁判で有罪となり,刑務所で服役しているとのことでした。「彼女に会いたいか?」と担当者が言い,1時間ほど自動車で移動しましたが,タイの刑務所で,前社長の妻と面会することができました。
(つづく…)
便利な「弁護士費用特約」
最近では,自動車保険に弁護士費用特約を付けている人が多くなっていると思いますので,今回は,弁護士費用特約について説明しようと思います。一般に「弁特」と呼ばれています。
弁特は,自分が弁護士を依頼したい場合に弁護士費用を支払ってくれるという便利な保険特約です。
弁特は,基本的に自動車の交通事故であれば人身事故,物損事故いずれでも,利用できます。
自分の過失がゼロでないと利用できないと考えている方もいらっしゃいますが,決してそのようなことはありません。自分に過失があっても弁特はつかえます。
残念ながら,基本的に「自動車事故」であることが条件であることが多いため,加害者が「自転車」の場合に利用できるかは保険会社により異なります。
次に,弁特を利用できる人の範囲です。
①保険契約者本人②保険契約者の配偶者(妻,夫)③保険契約者の同居の親族,④別居している未婚の子,⑤保険契約者の同乗者は,どの保険会社でも弁特が利用できます。また,保険会社によっては,自分の自動車保険と関係のない,他の自動車を運転している際の同乗者も利用できることがあります。意外と利用できる場面が多いので,自分が弁特を付けていなくとも,家族の弁特が使えることがあるので,確認してみるとよいでしょう。
弁特を利用する場合,どの弁護士に依頼しても大丈夫です。保険会社には,通常,特定の弁護士を拒否することはできませんので,心配する必要はありません。
保障される金額は,報酬について300万円,法律相談料について10万円が上限です。弁護士報酬が300万円を超過することは,通常はありませんので,ご安心ください。
また,弁特は,使っても次年度の保険料に影響がありませんので,遠慮なく,どんどん使った方がお得です。
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