(前号までのあらすじ 私は事務所の顧問先の会社の海外子会社での横領事件の調査のため,タイの刑務所で犯人に面会しました)
タイの刑務所は,市街地から自動車で1時間ほど走った場所にありました。
刑務所の面会室で,今回の横領事件の主犯である,前社長の妻に面会しました。前社長の妻は,ずいぶんとやつれた雰囲気でした。
「なぜ,こういう事件を起こしたのでしょうか」
と,たずねると,前社長の妻(タイ人)は,たどたどしい日本語で,
「会社が成長して仕事が増えていっているのに,給料がずっと同じ。給料が上がらなかった」
という意味のことを言ってしました。
「本社に報告するが,あなたは,なにか言いたいことはあるか?」
とたずねると,
「ここは人間がいるべき場所ではない。出してほしい」
と言っていました。
そのやりとりを,犯人逮捕のために活躍したK氏に伝えたところ
「どうでしょうか。私は,少し,やりすぎであったでしょうか」
とK氏が,私に,お聞きになるので,
「いえ,グズグズしていたら,逮捕を察知して犯人は逃げてしまっていたでしょう。Kさんの対応は,果断であり,必要なことだったと思います」
と回答しまた。
普段はハード・ボイルドなK氏は,そのときだけは,嬉しそうでした。
(つづく…)
物損事件について
交通事故における物損とは,簡単に言えば,交通事故によって「物」が壊れたことによる損害です。物損の典型例は,交通事故によって自動車が壊れた場合です。
人身事故,物損事故と分けるのは,物損事故には,自賠責が使えないこと,保険会社でも,物損については,人に関する損害と取り扱いをわけており,実務上,このような分け方をよくします。
自動車の賠償の考え方について簡単に説明します。
自動車の損害の額として一番単純なのが,修理費用です。交通事故が無ければ,自動車を修理する必要はなく,交通事故によって修理費用が発生したと考えることができます。
大きな損傷が無ければ,基本的に自動車の修理費用を損害として支払う場合が多いです。
自動車を修理すると場合によっては新しい自動車を買う方が安いという場合があります。
この場合には自動車の時価で損害金額を決める方法が使われます。
同種同程度の自動車を購入するといくらかかるかを基準にして算定されます。
インターネットを使って中古車販売業者のホームページで探し,同車種,同グレード,同年式,同走行距離の自動車の売買金額が参考になります。
自動車の損害として「評価損」という考え方があります。
評価損とは,一般的に自動車が交通事故の前後での価格の差額を言います。
評価損のうち技術的な問題で,機能や外観が事故前の状態に戻せない場合の評価損(技術上の評価損)は,基本的に賠償してもらえます。
しかし,事故車であることを理由に取引価格が下がる場合の評価損(取引上の評価損)は,認められたり,認められなかったりさまざまです。人気のある車かどうか,初年度登録からの期間,走行距離,損傷の部位等,様々な要素を考慮して判断されます。
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