(前号までのあらすじ 私は事務所の顧問先の会社の海外子会社での横領事件の調査のためタイに派遣されました)
タイでの横領事件の調査は,3泊4日程度の日程でおこなわれました。
自己負担なしでタイに旅行できたわけですが,調査期間は,現地社長の話の聞き取り,現地の警察への聞き取り,前社長の妻(犯人)と刑務所にて面会するなど,非常に濃密な調査でした。
その結果報告を50ページ程度の文書にまとめて,九州にある,本社に送付したことで,仕事としては,一区切りとなりました。
さて,前社長の妻は,タイで横領罪として有罪判決を受けて刑務所で服役中だという話をしましたが,前社長自身は,日本に逃げ帰り,九州の親元にいることが判明していました。
この前社長に対して,本社としては,なんらかの対応をしないといけません。
タイの子会社の調査の結果,私たちは「前社長自身は,横領事件には故意にはかかわっておらず,前社長の妻の単独犯」だという見解でした。
ただ,彼は,当時、タイ子会社の社長であり,自分の妻が会社から横領したわけですから,個人として,なんらかの責任を追及するべきだと考えました。
こういう場合,日本の会社法であれば「社長として,部下の横領事件を監督するべき責任」を追及できます。
ところが,今回の事件の場合,法律的な調査をすすめて行ったところ,
「タイ国内での横領事件ということになると,どうも,適用されるのはタイの法律になるらしい」
ということがわかってきました。
そうなってくると,前社長に対する裁判自体は,日本国内でできるとしても,タイの会社法を調査する必要が出てきます。
しかし,タイの会社法を,どうやって調べるのか……(つづく)
顔面醜状の損害の特殊性
後遺障害の中には,「外貌著しい醜状を残すもの」(7級),「外貌に醜状を残すもの」(12級)といったものがあります。
これは,簡単に言えば,首より上の露出している部分に,傷跡ややけどの跡(ケロイド等)が残った場合のことです。
そして,この後遺障害は,傷跡等の大きさや,場所,傷跡の状態から,後遺障害の認定の判断がなされています。
外貌に醜状を残すものという後遺障害は,他の後遺障害と異なり,逸失利益について少し特殊なところがあります。
後遺障害逸失利益は,本来できたはずの仕事ができず,その分もらえたはずのお金がもらえなかった損害です。
そのため,もしも,事故前と変わりなく,仕事をして,事故前と同じように収入がある場合に,逸失利益という損害はないと評価されることが多いのです。
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