(前回までのあらすじ…顧問先の海外子会社の横領事件により海外子会社の前社長に対する裁判をおこなうにあたり,タイの会社法を調査する必要がありました)
当時,タイの会社法に関する文献というものは,書店には販売されていませんでした。
そこで,タイの海外子会社の現社長に連絡をとり,タイの弁護士に「タイの会社法における代表取締役の責任」についての法律的な意見書を書いてもらって,裁判所に提出するという一幕もありました。
その事件は,最終的には和解という形で終了したと聞いています。
その事件の当事者の方々とは,のちのちまで,良いおつきあいをさせていただくことになりました。自分としても感慨深い事件でした。
その後,数多くの事件にたずさわったあと,大阪で独立して自分の法律事務所を開設することになりました。
独立してからも,破産申立事件,民事再生事件,債務整理事件,交通事故事件,離婚事件,建築紛争事件,証券被害事件など,まことに多彩な事件を取り扱いました。
次回から新シリーズに移行します。
「私が弁護士になってから」は第11話の今回で終了し,次回からは新シリーズ
「法律実務上のポイント」
を連載していきたいと思います。
法律実務には,教科書に書いてあること以外に,実務家であってはじめてわかることも多いのです。
たとえば,「借金の金額が何円以上であれば自己破産になるのか?」「会社を破産させようと思った場合の予算はどれくらいか?」「問題社員の取扱に困った場合にはどうしたらいいのか?」「離婚を考えた妻は,まず,なにをするべきなのか?」そういう実務的な知識についてお話をしていきたいと思います。
問題社員対策①「遅刻,欠勤が多い社員」
今回は,労務問題として,遅刻や欠勤が多い社員に対し,どのようにすればよいのでしょうか。
突然に解雇してしまうのは,非常にリスクが高いです。労働者は,労働関係の法律によって保護されており,簡単に解雇をすることは許されません。
もし,突然に解雇すると,あとで,「解雇が無効だ」と言って,裁判所に訴えられる可能性が高くなります。
ただし,日本の裁判所が求めているのは「解雇するな」ということではなく「解雇するときには,ちゃんと手順を踏んでください」ということです。
では,どういう手順を踏むべきなのでしょうか。
ステップ1 注意をしたことの証拠づくり
まず,問題社員に対して,問題点の改善を促します。
このとき,社員に対する注意は書面で行い,注意したという証拠を残す必要があります。
経営者の認識としては「口で注意したのだから,それで十分だろう」と思いがちですが,裁判所は「証拠」を求めます。
ステップ2 2回以上注意すること
問題点の注意は,1回ではなく,2回以上おこなうべきです。そして,文書で注意を行う際には,次に遅刻(欠勤)すれば,より重い処分を下すことを明記しましょう。
ステップ3 段階的に処分すること
処分も段階的に行う必要があります。注意→解雇は,あまりに性急すぎます。注意→厳重注意→始末書→減給→解雇ぐらいの段階は踏んでおきたいところです。
まとめ
遅刻,欠勤の多い社員に対しては
① 注意→改善努力→解雇
という手順を踏んで解雇すれば,あとで問題になることが少ない
② 注意したこと,改善努力をしたこと,は,必ず文書で証拠を残しておくこと
が雇用側にとって,重要と言えるでしょう。
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