今回は、債権法改正のうち「敷金」についてお話ししたいと思います。
1 敷金とは
今回の法改正がなされるまで、法律上の定めはなく、不動産取引上の慣習と裁判所の判断に基づいて利用されていました。そのため、敷金に関するトラブルがたくさん発生していました。(地域によっては、返金されない敷金「敷引き」制度が慣例の土地もありますね。)
しかし、今回の改正により、敷金の定義、敷金の返還義務が明確に定められました。
敷金は、「いかなる名目によるかを問わず、賃料債務その他の賃貸借に基づいて生ずる賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務を担保する目的で、賃借人が賃貸人に交付する金銭」と定義されました。
なお、今回の改正で定義された「敷金」は、不動産賃貸借に限定されるものではなく、他の賃貸借(レンタカー等)にも影響があるかもしれません。当然個人間の賃貸借にも影響があるので注意しましょう。
2 敷金は返還しなければならない
貸主は、敷金のうち、賃借人が負担するお金を除いた額を返還しなければならない、と定められました。
では、「賃貸人が負担するお金」とは、何のでしょうか?
この典型は、借主の原状回復義務です。借りたものを壊してしまった場合等には、借りたものを返還する際に、修理するか修理費を渡す必要があります。これを敷金から差し引くことができます。
一方で、通常の使用によって発生した損耗(そんもう=物が傷んで劣化すること)については、原則、貸主が負担することになります。これを敷金から差し引くことは認められません。今回の改正により、このことが条文で明らかにされました。
なお、通常損耗について、契約で民法と異なる定めを行うこともできますが、当該契約条項が無効とされることもありますので注意しましょう。
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