新型コロナウイルス感染症による緊急事態宣言が、全国に出されました。
内閣官房のウェブサイトでは「新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言」として、今回の緊急事態について、もっとも確実な情報が提供されています。
→内閣官房「新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言」は、こちらから
内閣官房から、もっとも重要な事項として、以下の情報が提供されています。これだけは知っておきましょう。
以下は、内閣官房のウェブサイトからの転記です。
国民の皆様へ ~まん延を防止するために~
令和2年4月7日に新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言が行われました。
・緊急事態宣言は、罰則を伴う外出禁止の措置や都市間の交通の遮断等、国外で行われている「ロックダウン」(都市封鎖)のような施策ではありません。
・医療機関への通院、食料・医薬品・生活必需品の買い出し、必要な職場への出勤、屋外での運動や散歩など生活の維持のために必要な外出は、自粛の対象となりません。
・不要不急の外出及び「三つの密」(①密閉空間(換気の悪い密閉空間である)、②密集場所(多くの人が密集している)、③密接場面(互いに手を伸ばしたら届く距離での会話や発声が行われる))が重なる状況を避けるようにし、自己への感染を回避するとともに、他人に感染させないよう徹底しましょう。
・日常生活や職場では、人混みや近距離での会話、多数の者が集まり室内において大きな声を出すことや歌うこと、密接した状況で呼気が激しくなるような運動を行うことを避けましょう。
・食料品等の買い物は可能ですので、買い占めの必要はありません。冷静な対応をお願いします。
・不要不急の帰省や旅行など都道府県をまたいだ移動は控えましょう。
・感染防止のためには、できる限り頻繁に石けんを使って手洗いして下さい。
・咳をする際には、咳エチケットにより飛沫を飛ばさないようにし、室内の換気にも気を付けて下さい。
緊急事態宣言とは「ロックダウン」ではない
海外では、新型コロナウイルスに対する対策として、「ロックダウン」という対応がされている国が多いです。
「ロックダウン」は、外国での多くの場合、
- 無断で外出していると警察官に逮捕される可能性がある
- 無断で外出すると罰金刑となる
- 外出するためには、政府に許可証をもらう必要がある(許可証はインターネット経由で取得できる)
- 空港や鉄道を強制的に停止させる
という、かなり厳しい内容となっています。
しかしながら、日本の場合、緊急事態宣言の冒頭に書かれているとおり、外国の厳しい「ロックダウン」とは異なっています。
日本での「緊急事態宣言」では、
- 外出したからといって、罰金刑にするわけではありません。
- そもそも、外出を許可制にしません。外出するかどうかは、基本的には自分の判断で考えてください。
- 空港や鉄道についても、強制的には停止させません。
という内容になっています。
何を避けろと言っているのか?
緊急事態宣言が「避けてください」と言っているのは、次の点です。
不要不急の外出
「三つの密」
「仕事場に出勤することはどうなのか?」というと、仕事は、当然、「必要」な行為です。したがって、不要不急には当たらない、ということになります。
ただ、仕事場で「三つの密」をつくらないように求められています。
この「三つの密」の回避は、日本の企業では、なかなか、難しいところがあるように思います。
まず、密閉空間をつくらない、ということが求められています。
したがって、会議室で扉を閉めて会議をすることは避ける必要があります。
また、「密集場所」をつくらないように求められています。
いわゆる「大部屋」での仕事は、通常、密集場所になると思います。
そうなると、企業にとっては、密集場所をつくらないためには、勤務してくる人員を2分の1程度に減少させたり、自宅から仕事をすることができるような、いわゆるテレワークの導入が必要となってきます。
また、密接場面をつくらないように求められています。
密接場面とは、「互いに手を伸ばしたら届く距離での会話や発声」であるとされています。
ですので、たとえば、会社で、隣の席の同僚と会話をすると、密接場面であることになります。
違いに手を延ばしても届かない距離といえば、2メートル程度ということになりますでしょうか。
2メートル離れていると、心理的に、会話をおこなうことは難しくなってくるのではないでしょうか。
緊急事態宣言にしたがわない場合にはどうなるのか?
政府が公言しているとおり、緊急事態宣言自体には、強制力はありません。
したがって、緊急事態宣言に違反したということだけでは、処罰されるようなことはありません。
ただし、労働安全衛生法という法律があります。
これは、職場の労働について、労働者の安全を確保することを求める法律です。
政府が、「三つの密」を避けてください、ということを公言しているわけですから、それに反して、「三つの密」を避けるための対策を何もとっていなかった場合には、労働安全衛生法違反とされる可能性があります。
この場合には、会社に対して、罰則が適用される可能性もあります。
また、「三つの密」を避けずに、結果的に、会社で新型コロナウイルスに感染してしまった場合、労働災害となり、会社がその責任を追及されるという可能性もあります。
そういうことを考えると、今回の緊急事態宣言に対して、何もしないということはできないのではないかと思います。
「テレワーク」の場合には、給料はどうするのか?
まず、「テレワーク」の場合には、自宅で仕事をさせるわけですから、給料は全額支払う必要があります。
ただ、たとえば、従業員と交渉して、テレワーク期間中は、会社のために仕事をする時間を通常の半分にしてよいので、その分の給料を減額する、という合意をすれば、それはそれで有効でしょう。
ただし、どういう合意をしたのか、ということについて、きちんと書面をつくっておく必要はあります。
完全に仕事をしない、自宅待機にした場合には、給料の支払いをどうするのか?という問題があります。
これは、会社が置かれている状況によって違いがあります。
ライブハウス、野球場、映画館、劇場などではどうか?
県知事などの指定により、ライブハウス、野球場、映画館、劇場に対して、緊急事態宣言にもとづいて、営業停止の要請があった場合には、会社は、営業を停止することになります。
この場合には、「会社の都合による休業」とは言えないと思われます。
ですので、休業手当の支払い義務は無いと思われます。
飲食店・小売店で、お店を休業させた場合、給料はどうするのか
一般的には、会社の都合で従業員に休業を命じた場合、給料の60パーセント分を支給するのが一般です。これを「休業手当」と言うことが多いです。
ただし、今回の緊急事態宣言下において、休業手当が必要となるのかどうかは、考えないといけません。
飲食店や小売店は、接客業が中心となる仕事です。
そして、接客業は、当然、「違いに手を延ばしたら届く距離での会話」をともなう仕事ということになります。
したがって、緊急事態宣言が出されている状況下では、飲食店や小売店は、営業自体を自粛せざるを得ない状況だとも言えます。
こういう場合に、従業員を休業させたのが、「会社の都合」であるとは、さすがに言えないように思います。
この場合には、店舗を休業している期間中、従業員の給料については「ゼロ」という考え方もあり得ると思います。
なお、厚生労働省の見解では、
「緊急事態宣言が適用されている状況下では、飲食店、小売店には、休業手当の支給は無い」
と考えているようです。
ただし、「絶対に休業手当の必要が無いのかどうか」については、法律家の見解は別れています。
労働者の立場にたった弁護士の場合には、それでも休業手当の必要がある、と主張している方もいます。
緊急事態宣言の下での休業について、休業手当が必要かどうか、ということについては、前例が少ないため、どちらが正しいのかを完全に判断できる人はいない、とも言えます。
厚生労働省の見解も、絶対に正しいともいえません。
最終的には、裁判所が判断することになると思います。
ただし、今回の新型コロナウイルス感染症に関する休業手当について、まだ、裁判所で争われた事例は、ありません。
類似の問題として、社員から「熱や咳がある」との申出があった時の経営者はどうするべきか、については、こちらをクリックしてください。
顧客対応の必要の無い一般的な会社の場合
新型コロナウイルス感染症の感染の恐れが比較的低い、一般的な会社の場合、従業員に休業を命令した場合には、休業手当の支給が必要だと思います。
なお、休業ではなく、「テレワーク」を命じた場合には、全額の給料支給が必要です。
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