従業員が新型コロナウイルスに感染したときの対応マニュアル

ビジネスミーティング

万が一、会社の従業員が、新型コロナウイルスに感染していたことが発覚した場合、社長は、みずから、陣頭指揮をとるべきです。

この場合には、ためらってはいけません。

 

ためらってはいけない理由は2点あります。

1つ目の理由は、新型コロナ感染対応は、時間を争う問題だからです。

放置すると、二次感染、三次感染が発生してしまう可能性があります。

ですので、他人まかせにせずに、社長がみずから決断を下して、迅速に対応しましょう。

 

2つ目の理由は、会社内にあたえる動揺を最小限度にすることです。

新型コロナ感染の情報は、もし隠そうとしても絶対に隠せないです。

そうであれば、逆に、会社内にオープンにしてしまって、社長のトップダウンによって、明確に対応した方が、動揺を最小限度におさえることができるのです。

こういう場合に怖いのは、「漠然とした恐怖感でパニックになること」です。

パニックをおさえるために、社長は、みずから従業員に対して、必要な情報をあたえたうえで、適切な対応を指示しましょう。

 

新型コロナ感染が発生してしまったことは、残念なことです。

ただ、それは、天災のようなものです。

必ずしも、社長の責任ではありません。

従業員も、当然、それは理解しています。

ただ、従業員は「どう対応したらいいのですか?」

と、リーダーからの指示を待っています。

 

そういう不安な状態ほど、

従業員は、不安なときほど、

「具体的な行動を、きびきびと命令してもらえること」

に対して、安心するものです。

社長のリーダーシップの発揮のしどころだと思います。

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新型コロナ対応については、

  • 感染者に対して、どう対応するのか、
  • 濃厚接触者に対してどう対応するのか、
  • 会社内の消毒は、どうするのか?

という問題があります。

 

順番に説明していきます。

 

 新型コロナ感染者に対する対応

感染者に対しては、感染リスクがなくなるまでは休業させます。

少なくとも、症状がなくなってから、14日間は休業してもらいましょう。

 

これは、病気によって、労働ができなくなったケースですから、給料の支払いは不要です。

また、休業手当の支給も不要です。

 

感染者に冷たくしないこと

ただし、感染者に対して、あまりに冷たい態度をとったり、非難してはいけません。

また、「感染したからクビだ!」などという、急いだ結論を出してはいけません。

なぜならば、社長は、これから、感染者から、情報提供をしてもらわないと困る立場だからです。

感染者との濃厚接触者や感染ルートをはっきりさせる必要があるのです。

この情報がなければ、会社としての対応の計画を立てることができないのです。

ですから、感染者と、完全にケンカをしてはいけないのです。

そうではなく、「会社や同僚に感染を広げないために、これから、あなたには協力をしてもらいたい」ということを言うべきでなのです。

会社との関係で、感情的な対立さえ、発生させていなければ、感染者は協力するはずです。

なお、情報提供といっても、そのために会社に来させるわけにはいきません。したがって、電話やテレビ電話などで会話をすることによって、情報収集をしましょう。

 

なお、情報提供に必要な時間については、労働時間に準じて考えてもいいかもしれません。

 

なお、その感染者が、無自覚な行動、たとえば、緊急事態下において、パチンコ店に通っていたとか、会社外の飲み会に参加していたとか、そういう行動をとっていた場合には、会社の業務命令違反ということで、懲戒処分を出すことも考えられます。

ただ、懲戒処分は、いつでも出せます。

ですから、今ここで出さなくてもといいのです。

感染者が新型コロナ感染から回復したあとに、懲戒処分を出してもいいのです。焦る必要は全く無いのです。

今すぐのところは、感染者が持っている情報が必要なわけですから、今すぐ懲戒処分の話は、しないようにしてください。

 

労災保険適用の可能性もある

なお、会社内での感染であったり、通勤電車内で感染したことが分かった場合には、労働災害となる可能性があります。

労働災害として認められた場合には、労災保険が使えます。

その場合には、国から労災給付金として、休業補償金が支給される可能性があります。

 

ビジネス

感染者には何を聞くのか?

感染者から欲しい情報は、以下のとおりです。

発症した日は何月何日か?

この場合の発症とは、37・5度以上の発熱があった日とします。

 

発症した日の3日前からの会社における行動

会社内で、滞在したことのある場所、たとえば、トイレ、会議室、喫煙室など

 

その3日間に、半径2メートル以内で30分以上接触した人は誰か?

 

会社外の取引先で会話をした人はいるか?

 

これらの情報を取得することで、今後、会社内における濃厚接触者を特定することができます。

また、会社の中で、重点的に消毒をするべき場所を特定することができます。

また、大変残念なことですが、取引先の人と濃厚接触をしていた場合には、取引先の人に、そのことを通知する必要があるでしょう。

 

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濃厚接触者には、どう対応したらいいのか

段階を経て対応します。

濃厚接触者を特定すること

感染者の発症から3日前までさかのぼって、その3日以内に、半径2メートル以内で、30分以上接触した人は誰か、ということを調べます。

とくに、30分以上、会話をした人は誰か、ということを調べます。

順序としては、まず、感染者に話を聞いて、その3日以内の行動を調査します。

たとえば、「Aさんと30分程度会話をした」「2日前の午後3時からの会議に出席した」という話を聞き出します。

次に、感染者の話の中に出てきた「Aさん」や、「会議の出席者」に話を聞いて、感染者と話をしたかどうかを確認します。

会議の場合には、感染者と一緒に室内に30分以上いた人は、すべて、濃厚接触者と考えます。

 

こうして、濃厚接触者を特定します。

 

濃厚接触者に対する対応

濃厚接触者に、発熱などの自覚症状がある場合

まだ感染しているとは断定できません。

しかしながら、緊急事態下でのことですから、「濃厚接触であり、かつ、発熱があるのであれば、業務命令として自宅待機を命じる」とするべきです。

 

濃厚接触者に、自覚症状が無い場合

この場合も、会社の業務命令として自宅待機を命じるべきです。

症状が、今は無くても、明日には発症する可能性もあります。

 

また、新型コロナウイルスは、無症状でも、ウイルス感染しているというケースも多いのです。

したがって、相当程度に感染の可能性があるという理由で、自宅待機を命じるべきです。

自宅待機の期間としては14日間としましょう。

14日後に、再度、体調を確認し、そのときに体調に問題がなければ、出勤してもらってもよいと思います。

 

会社内の消毒作業

感染者の発症3日前からの行動を確認したうえで、一度でも感染者が利用した場所は、全て消毒しましょう。

  • 感染者のデスク
  • 感染者が仕事をしていた部屋全体
  • 感染者が使用したトイレ
  • 感染者が歩いた廊下
  • 感染者が出席した会議室

これらは、全て消毒の対象です。

 

0.05%の次亜塩素酸ナトリウム(薄めた漂白剤)で拭いた後、水拭きするか、アルコールで拭きましょう。

 

家庭用の洗剤で洗浄するだけでも、かなり有効だとのことです。

 

消毒の際には、机の上、椅子などの他、取っ手、ドアノブなども拭き取りをしましょう。

 

なお、拭き取り作業の際には、なるべく、使い捨ての紙タオルなどを使用しましょう。

紙タオルは、清掃後、密閉したビニール袋に包んで捨てましょう。

 

Single lion standing proudly on a small hill

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危機こそ社長のリーダーシップが必要

会社で新型コロナ感染者が出てしまう……

これは、社長にとっては、天災そのものです。

いくら予防に気をつけていたとしても、感染者が出てしまうことは、運の問題です。

また、いくら従業員に対して、退社後の行動を気をつけるように注意したとしても、実際に、従業員のあとを尾行してチェックするようなこともできません。

ですから、たとえば、従業員が、会社から退社したあとに、パチンコ店通って、感染するようなことも、社長としては、直接に防止することはできません。

しかしながら、「感染が発覚したあと」に、どう行動するかは、天災ではありません。

社長の決断と、リーダーシップが試される場面です。

こういう場面で、「新型コロナ感染なんて、困ったことだ。天災だ」と言って、嘆き悲しんでいるだけでは、従業員は、社長のことをリーダーだとは認めません。

もちろん、これは天災ですし、不幸です。

泣きたくなる気持ちは、とてもよく分かります。

しかしながら、です。

リーダーであれば、従業員が不安を抱えている場面だからこそ、断固として「コロナ感染とたたかう」という意思を表明するべきです。

そして、「何をするのか」を従業員に指示するべきです。

そして、みずから率先して行動するべきです。

たとえば、感染者が使用していたトイレなどの清掃作業についても、社長みずから清掃をしてもよいと思います。

もちろん、社長が清掃したからといって、何が変わるというわけでもありません。

しかし、従業員は、社長がみずから清掃作業に取り組もうとする、その後ろ姿を見て、奮い立つのです。

リーダーが、みずから率先して行動する姿を見て、それで奮い立たなければ、人間ではありません。

 

古い格言にあります。

「リーダーとは、希望を配る人のことだ」

……ナポレオン・ボナパルト

チャンスは、ピンチの顔をしていることがあります。

このピンチを、社長のリーダーシップを確立する「チャンス」ととらえることもできると思うのです。

動画でも、新型コロナ対策のマニュアルについて説明しています。

この記事を書いた人

yoshida

香川県高松市の弁護士 吉田泰郎法律事務所です。JR高松駅徒歩5分。あなたが話しやすい弁護士をめざしています。

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