アスベスト被害救済制度の枠組み

石綿肺(アスベスト肺)とは

石綿肺(アスベスト肺)はじん肺の一種の不可逆性の疾病である。

石綿肺は,主として職業性ばく露によって,肺にびまん性間質性の線維症を主として症状が発生し,線維化が進展すると拘束性換気障害,ガス拡散障害が高度となり,呼吸不全で死亡するケースの多い疾病である。

石綿肺のX線像は,岩石吸引に起因する珪肺と異なり,長期塊状影が認められないことが多い等の特徴等があり,珪肺と比較して診断が困難とされている。

石綿肺の危険性

石綿肺の臨床所見については,保険院社会保険局健康相談所の助川らが昭和15年に発表した「アスベスト工場における石綿肺の発生状況に関する調査研究」によって日本においても明らかとなっていた。

この調査は,石綿紡績工場に勤務する1024人を対象とする大規模なものである。

そして,今日得られている石綿肺の臨床所見の多くは,助川らの研究報告によって明らかにされたものである。

 石綿肺の予後がきわめて悪いことは,助川らの研究当時から経験的に知られており,昭和27年に労働省労働衛生試験研究が開始され臨床及び疫学研究が現在まで続いている。

それによれば,大阪府下で石綿肺と診断され要療養と労災認定された患者の5年生存率は男で39パーセントにすぎないとの統計上の数字も解明されている。

石綿肺の危険性の国の認知時期

よって,石綿肺の危険性及びその発見の困難性,また,石綿肺の臨床所見については,遅くとも昭和15年には明らかとなっていたのであるから,国は,遅くとも昭和15年以降,石綿取扱い作業に従事する労働者が石綿粉塵を吸引すれば,石綿肺等の重篤な疾病にり患し,引いては死に至ることを予見し得た。

 なお,当時でも,石綿ばく露により死に至る重篤な疾病にり患することが解明されていたことから,石綿吸引が生命健康に重大な影響を及ぼすことを予見し得たことは明らかである。

大阪泉南アスベスト訴訟

 大阪泉南アスベスト訴訟は、大阪府南部・泉南地域の石綿(アスベスト)工場の元労働者やその遺族の方々などが、石綿による健康被害を被ったのは、国が規制権限を適切に行使しなかったためであるとして、損害賠償を求めた事案である。

 この訴訟については、平成26年10月9日の最高裁判決において、昭和 33年5月26日から昭和 46年4月28 日までの間、国が規制権限を行使して石綿工場に局所排気装置の設置を義務付けなかったことが、国家賠償法の適用上、違法であると判断された。

この判断を受けて,厚生労働省は,国の責任のもとにおいて,石綿(アスベスト)工場の元労働者やその遺族が、国に対して訴訟を提起し、一定の要件(以下「本件和解基準」という。)を満たすことが確認された場合には、国は、訴訟の中で和解手続を進め、損害賠償金を支払うことを公表した。

厚生労働省の示す和解基準

厚生労働省が公表した和解基準は、次のとおりである。

①  昭和33年5月26日から昭和46年4月28日までの間に、局所排気装置を設置すべき石綿工場内において、石綿粉じんにばく露する作業に従事したこと

②  その結果、石綿による一定の健康被害を被ったこと

③ 提訴の時期が損害賠償請求権の期間内であること

まとめ

上記が、今日にいたるまでの日本でのアスベスト被害の救済制度の概略である。

アスベスト被害については、まだまだ、多くの方が被害の救済を受けていない。

また、被害者の多くが亡くなっており、その遺族が被害救済を受けていないと思われる。

香川県高松市には、エタニットパイプ高松工場という、アスベスト被害の発生源があった。

高松工場で発生したアスベスト被害については、吉田泰郎法律事務所には、国家賠償請求を何件もおこなった実績がある。

被害救済をまだ受けていない方は、ぜひ、ご相談されたい。

この記事を書いた人

yoshida

香川県高松市の弁護士 吉田泰郎法律事務所です。JR高松駅徒歩5分。あなたが話しやすい弁護士をめざしています。

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