導入修習へのステップアップ
回答: 導入修習で行われるのは,
- 修習前に提出した事前課題の解説
- 起案とその講評
- 具体的な事案を題材とした演習
- 法実務の講義
などです。
※ なお,司法試験までは文書作成のことを「答案」と言っていたでしょうが,司法修習以降は文書作成を「起案」といい,その後,実務でもずっと「起案」と言うことになりますので,そろそろ「起案」という言い方に慣れておきましょう。
修習前に提出した事前課題の解説
修習開始前に,白表紙をはじめとして司法修習に関する資料が送られてきます。
その際に,修習に入る前に回答する,事前提出の課題も同封されています。
その課題についての解説が行われます。
起案とその講評
民事裁判,民事弁護,刑事裁判,検察,刑事弁護の即日起案があります。
即日起案というのは,研修所の正規の時間内に提出しなければならない起案のことです。
3時間とか4時間で提出しなければならないのです。
司法試験をイメージしている方は
「なんだ,3時間かけてもいいなら楽ではないか?」
と思うかもしれませんが,司法試験にはない,実務的な細かいことをいろいろと考える必要がありますから,司法試験よりも楽とは言えません。
自由ではありますが…。
※通常,即日起案の最中に,アメやチョコレートを食べていても問題とはされません。
即日起案ではない起案を「自宅起案」といいます。
これは,自宅で一晩かけてじっくり考えてきなさい,という起案です。
当然,書籍やネット検索をしてもいいし,友人と議論してもかまわない起案です。
「それなら楽だ」
と思うかもしれませんが,調べれば調べるほど,いろんな疑問がわいてきて,まとめきれなかったりするので,これはこれで大変なのです。
また,友人と議論をしていても,集団心理で,全員間違った方向に行ってしまったりすることもあります。
友人と議論できるからといって,正しい結論にいたれるともかぎりません。
私の経験上は,信用できる書籍を読みながら,一人でじっくり考えた方が,よい起案ができると思います。
導入修習での起案については,実務修習,集合修習中の起案と異なり,時間,内容ともに少ないハーフ起案というものでした。
しかし,起案の内容自体は,二回試験をはじめとした,司法修習中の起案と同じです。
この起案の講評も,導入修習中に行われます。
なお,起案の評価については,司法修習の成績には入らないと公言されています。
弁護士希望であれば,額面どおり受け取って,のびのび書いてしまうのもいいでしょう。
ただ,裁判官,検察官希望であれば,導入修習の時点から,高い成績をとっておかないと,教官からの「引き」に影響するような気がします。
具体的な事案を題材とした演習
演習についは,ある一定の事案をもとに,実務的な考え方を学びます。
グループワークのようなものもありましたし,講義に近い形の演習もありました。
たとえば,ある検察修習では,
窃盗事件の被疑者の供述書を読んだうえで,5人から6人のグループで議論をしました。
この窃盗事件の被疑者というのが,見え透いたウソばかりつく人間であって
「窃盗をしたのは私ではなくて,私と同姓同名の別の人間だ」
「盗難品を私がもっていたのは,たまたま,真犯人が私にくれたのだ。その人は,たまたま私と同姓同名だった」
「その真犯人は,たまたま,私と同じ指紋をしていたようだ」
などという,ウソがまるわかりの弁解をしているわけです。
そこで,議論のテーマとして
- この被疑者の言い分は信用できるか,できないか
- 信用できないとすれば,なぜ信用できないと言えるのか
- 信用できないということを証明できる証拠として,なにを挙げられるか
というようなテーマがあたえられ,グループで議論したうえで結論を出す,という演習でした。
修習生は,こういう演習が大好きなので,議論に花が咲くことになりますが,
意見が百出して,制限時間内に議論をまとめることができなかったり,
議論好きな人が間違った方向に議論をもっていってわけのわからない結論になったり,
テレビドラマの見すぎで,「いや,一見信用できなからこそ,実は信用できるのではないか」などという,きわめて,うがった見解が出されたり(笑)
まあ,
「はじめての人がやるとこうなるんだなあ」
というような,迷走ぶりになることが多いです。
もっとも,そういう,「練習」を重ねて,みんな,一人前になっていくのです。
最初くらいは,思いっきり迷走してしまってもいいのかもしれません。
法実務の講義
講義については,弁護士倫理,民事執行法,民事保全法に関する講義や,実務修習のガイダンス的な講義がありました。
その他にも,進路に関する相談の機会(特に任官,任検希望者)など細々としたものもありました。おおむね,以上のような内容だったと思います。