弁護修習の見るべきポイント1 依頼者への感情配慮
弁護修習では,こういう点を見るべきだ,というポイントはあります。
弁護修習では,弁護士と依頼者との打合せにおいて,
「弁護士が,いかに依頼者の感情に配慮して話しているか」
ということを,ぜひ学んでほしいと思います。
私が思うに,たんに法律の理屈だけをマスターして喜んでいられるのは,司法修習生と1年目の新人弁護士だけです。
朝から晩まで24時間,M&A契約書とか作っていればよい,という仕事内容であれば,依頼者の感情配慮は必要ないかもしれません。
しかし,はっきり言いましょう。
人間ではなく,書類だけを相手にして仕事をするというのは,低級な働き方の典型例です。
弁護士として高度な仕事をしようと思ったら,法律の理屈よりも,依頼者に,いかに納得感,満足感を持たせるか,ということが重要になってきます。
裁判をした結果,たとえば,相手方から1000万円を勝ち取ったとしましょう。
ここで,上手な弁護士が対応すると,依頼者は
「先生のおかげで,こんなにすばらしい結果になりました。とても嬉しいです」
と心底,満足するのです。
しかし,同じように相手方から1000万円を勝ち取るという結果を出したとしても,下手な弁護士が対応すると,依頼者は,
「なんでこれだけ時間をかけて,これだけなんでしょうか?他にもっと良い方法はなかったんでしょうか?
先生以外に弁護士は頼めないんでしょうか?」
という不平不満をタラタラ述べることになっているかもしれません。
これって,弁護士として,つらいですよね……
いったい,どこが違うのでしょうか?
これは,弁護士として仕事を始めれば,直面する問題です。
「ぼくが内定もらっている事務所は企業法務だから関係ないよ」
と思っていますか?
全くの大間違いです。
企業法務の事務所こそ,依頼者への感情配慮がもっとも必要となるのです。
書面作りはできるけど,依頼者の信頼を得られないような弁護士は,一生下働きか,3年でクビです。
少なくとも,幹部にはなれません。
なぜならば,企業法務の事務所のパートナーとなるためには,「仕事をとってくる仕事」「顧客になっていただく仕事」が絶対的に必要ですから。
弁護士が人として信頼されなければ,顧客が増えることはありません。そして,信頼されるためには,顧客の感情理解は絶対に必要なのです。
「書面だけ書いていれば仕事は来る」
と思っている弁護士は,絶対にパートナーになれません。
冷厳な事実です。
世の中では,「仕事ができる弁護士」よりも「仕事をとってくる仕事ができる弁護士」の方が上なのです。
そう考えれば,マチ弁であれ,企業法務であれ,依頼者の感情理解,感情配慮は,全ての弁護士の共通の課題だと思いませんか?