ボスと喧嘩型の独立の場合
ボスと大喧嘩をして,もはや事務所にいることができなくなったので独立する,というパターンがあります。
かなり多いパターンです。
弁護士は,主義主張がハッキリしていて,表現能力の高い人が多いので,一度喧嘩をはじめてしまうと,お互いにヒートアップして,とことんまで喧嘩をしてしまうことがあります。
喧嘩の原因は,あまりたいした問題ではないことが多いです。
たとえば,給料が上がらないから,とか,アソシエイトが個人事件をとってくることに対して,ボスが文句をいったというような,それ単体では,とても小さな出来事であることが多いです。普通に考えたら
「そんな小さなことで,事務所を飛び出すような理由にはならないように思うが」
ということが多いです。
ただし,これは夫婦喧嘩と同じであり、
「原因がよくわからない喧嘩の方が,根が深くて,やっかいだ」
ということが,よくあります。
若い方は意味がわかりませんか?
人生経験を経てくると,その意味がよくわかるようになるんですけどね~(笑)
つまり,「明白な原因のある喧嘩ならば,喧嘩の原因が解消すればそれで喧嘩は終わり」です。
ところが,「お互いの不信感,嫌悪感にもとづく喧嘩の場合には,喧嘩の直接の原因は,たんなる口実に過ぎないのであって,本質的な問題は,お互いの不信感,嫌悪感そのものである。したがって,その本質的な問題が解決しないかぎり,喧嘩は終わらない」
ということです。
そして,不信感,嫌悪感というものは,普通は解消することはないのです。
ボスとアソシエイトの,どちらが悪かったとしても,自分がアソシエイトの立場であれば,出て行くのは自分の方です。
こういうふうに「ボスと喧嘩して独立しました」というパターンも,弁護士の業界の場合には,けっこう多いです。
さて,こういう「喧嘩して独立パターン」の場合には,独立後に注意が必要です。
その理由は
1 突然に独立するとなると,独立の準備が不十分なことが多い
2 金銭的にも余裕がない状態で独立することになる
3 独立することについて,「しょうがないので独立」したという気持ちなので,自分のなかに不幸感がある。
というところです。
兵法の格言にあてはめていえば,
憤兵(ふんぺい)は敗れる
というところでしょうか。
相手が間違っている,相手が悪い,と,それが真実なのかもしれません。
かといって,相手が悪いという道徳論だけで戦争を起こした場合には,その戦争には負ける可能性が高い,ということです。
善悪は大事ではありますが,より重要なのは,なによりも「戦争を起こしたのであれば勝たなければならない」という現実です。
「私たちは正しいのであるから,敵がどんなに強大であっても戦争をするべきだ」
という思考におちいると,その戦争には負けるでしょう。
必要なのは,善悪ではなく,勝つための準備,計算なのです。
独立についても同じことです。
ボスと喧嘩をした。
ボスは間違っている,ボスは悪い,だったら,こんな事務所は辞めて独立するぞ,という, 短絡的な行動は厳禁です。
はき違えてはいけません。
あなたにとって大事なことは,あなた自身が独立して成功することです。
ボスが不幸になることではありません。
ですから,ボスが気に入らないなら独立をすることはかまいませんが,そのためには,独立を決めてから,秘密のうちに事前準備をおこない,独立し手成功できる計算が十分にたってから独立をすることです。
それでも,ボスがバカでどうしようもなくて,尊敬できないんですという人もいます。
もしも,ボスがバカで尊敬ということなら,対処法はひとつです。
我慢することです。
勘違いしてはなりません。賢くて尊敬できるボスの元で働きたいのであれば,あなたは,お金を払って,そうするべきです。
そういうボスのところでなら,無料でも,自分がお金を払ってでも,働きたいという弁護士が大勢いるはずです。
バカで尊敬できないボスのところで我慢しながら働くからこそ,あなたの労働にはお金を払われる価値があるのです。
どんなにバカであっても,給料を払っているボスは,良いボスです。
この言葉の深みは,あなたが独立すればわかりますよ(笑)。