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自分の名前から事務所の名称を付ける

【注意】本記事において事務所の名称についてさまざまな評価をしていますが特定の事務所の名前に否定的な評価をする意図は全くありません。

一番良く見る命名方法である。弁護士の個人の名前を、そのまま事務所の名称にしてしまう方法である。

(例)
吉田泰郎法律事務所

吉田法律事務所

メリット1 自分が代表者であることを自然とアピールできる。
名前の付け方としては、きわめて平凡とも言えるが、メリットが大きく、デメリットが少ない、名前の付け方である。
年齢が若い弁護士の場合には、この意味でのメリットは大きいと思われる。
やはり、一人事務所であっても、「事務所の代表の弁護士」と「それ以外の弁護士」では、世間の見る目は異なる。

メリット2 本物感がある
事務所の名前については、私も非常に詳しく検討し、さまざまな事務所の名称を提案したことがある。
ただ、人名以外の名称の場合、どうも、しっくりこないというのが本音であった。
この「しっくりこない」という感覚は、表現が難しいのだが、人名以外だと、なんとなく「ニセモノ感」のようなものがただよってしまうのだ。
たとえば、どのような名前でもいいのだが、
ビューティフル法律事務所
M&A総合法律事務所
Mackenzie法律事務所
さわやか法律事務所
などのように、人名以外の法律事務所名だけを聞くと、なんとくなく
「本当に、そういう事務所は存在するのか?」
という、うさんくささを本能的に感じてしまうところがある。

その一方で、個人の名前を付けた事務所の場合には、「その名前の個人は少なくとも現実に存在するだろう」という安心感があるのだ。

私も、20や30くらいの事務所名を考えてみた。
どの名前も、それなりに良い名前であったという自負はある。
そして、事務所のメンバーに真剣に検討してもらった。
その結果
「やはり、吉田泰郎法律事務所という個人名を超える名称はない」
という結論となった。
事務所のスタッフが少人数の間は、とくに深く考えずに、自分の名前を付けておくのが一番良いのかもしれない。

デメリット1 他の弁護士と共同経営する場合には名称の変更が必要となることが多い。
対等の立場で他の弁護士と共同経営をすることになった場合には、通常、事務所の名前にパートナーの弁護士の名前を入れるものである。
たとえば、吉田が、斎藤さんという弁護士さん、山本さんという弁護士さんと共同で事務所を経営しようと思った場合には
吉田・斎藤・山本法律事務所
というような名前となる。
名前の順番は、その事務所における「偉さ」の順番と考えるべきである。
したがって、
吉田・斎藤・山本法律事務所
という名称の場合には、吉田が一番偉く、次に偉いのは斎藤さんであり、三番目が山本さんということになる。

デメリット2 共同経営者が増えてくると名前が長くなる
事務所の共同経営者が増加した場合、たとえば、
吉田・斎藤・山本・高橋・鈴木法律事務所
という名称にならざるを得ない。
世間の一般人は、こういう異様に長い名前の法律事務所に対しては「変」という感想をもつだろう。
普通、人名を関する場合には三名までが限界と考えるべきである。
それよりも共同経営者が増加した場合には、人名以外の他の基準で事務所の命名をしなければならなくなってくる。

 

デメリット3 アソシエイトが代表者ではないことが顧客に容易にわかってしまう
アソシエイトが、はじめての顧客と接客するときに、
事務所の名称が
吉田泰郎法律事務所
であって、アソシエイトの名前が山田弁護士さん、であった場合には
顧客は名前を見るだけで「事務所の代表の弁護士ではない」ということがわかってしまうだろう。
「代表の弁護士が一番エライ弁護士」だというのは一般常識であるから、顧客は、少なくとも「吉田泰郎法律事務所において山田弁護士という弁護士」は事務所で一番エライ弁護士ではない、ということはわかってしまう。


デメリットといえばデメリットだといえるかもしれない。
もっとも、それは、あくまで最初の一瞬だけのことに過ぎないことではある。顧客の相談事項について、十分な知識と経験、そして、顧客の話を真剣に聞こうとする弁護士であれば、3分以内に顧客の信頼を勝ち得ているだろう。