戦略的な修習地の選択
司法試験に合格したあとは、実務修習地の希望を提出することになるが、修習地の希望を出す段階から、就職活動にとっての有利・不利が始まっていると考えなければならない。
競争の激しい修習地と、選ばれる理由
東京…出身大学が東京にあることが多いから
京都…出身大学が京都にあることが多いから
北海道…スキーがしたいから
最近の修習地選択の傾向
吉田が現役で修習生をしていた時代は、単純に、希望する実務修習地を第1位から第8位まで列挙させる方式であった。
しかし、最近は、実務修習地の選択方法が、複雑化しているらしい。
実務修習地を第1位から第6位まで( 6つになったらしい)列挙させるのは同じだが、どの修習地でも書いていいわけではなく、
「そもそも修習地として書いてよい修習地に制限がされている」
らしい。
どういうことかというと、修習地を3つの「群」にわけて
1群…第1群からは、2箇所だけ修習地に書いてよい
2群…とくに特別な制限なし
3群…第5位と第6位を書くのであれば第3群から選ばなければならない
という制限がされているのだ。
制限をしている意図は、大都市圏での修習を希望する修習生が多いので、なるべく修習生を分散させようという理由のようである。
なお、具体的な場所は、年度によって異なるようだが、ある年には、こうなっていた。
【1群】
東京、立川、横浜、さいたま、千葉、宇都宮、静岡、甲府、大阪、京都、神戸、大津、名古屋、福岡、仙台、札幌
【2群】
水戸、前橋、長野、新潟、奈良、和歌山、津、岐阜、金沢、広島、岡山、熊本、那覇、福島、高松
【3群】
福井、富山、山口、鳥取、松江、佐賀、長崎、大分、鹿児島、宮崎、山形、盛岡、秋田、青森、函館、旭川、釧路、徳島、高知、松山
1群では、東京が、東京本庁以外に、立川支部が独立して修習地となっていること、また、大都市以外に、甲府、大津、宇都宮など、大都市近辺の都市も1群あつかいされていることがわかる。
2群では、関東からは、唯一、水戸が(逆)選抜されていること、四国は全体的に不人気のなか、高松が、高裁所在地という威光により、選抜されていることがわかる。
3群では、札幌が1群なのに、旭川、釧路は修習しやすいようだ。
この配置を見れば、関東、関西、の大都市圏近くで修習したがる修習生が、極端に多いことがわかる。
まあ、たしかに、最近の就職活動事情をみれば、大都市付近に行きたがるのもやむないところもあるかもしれないが…
都市伝説
都市伝説であるので、本当かどうかはわからないが、
大阪は、修習生の受入キャパシティが多いにもかかわらず、不人気であるため
第一位に大阪と書くと、必ず大阪で修習できる
という噂がある。
また、京都は、弁護士の業界がきわめて閉鎖的であるため、京都の弁護士は、京都修習からだけしか採用しない、そうだ(噂)。
それは噂であるが、たしかに、京都人は「社交的であるが」閉鎖的である。これは事実だ。
なにしろ、京都人は「大阪の空気を吸うと心が汚れる」と本気で思っているらしいからな(笑)
したがって、もし、希望が「大阪近辺で修習したい。遠隔地は困る」ということであれば、
①大阪②神戸③奈良④岡山
というラインナップが有効である。
第一位大阪、がとおりやすいうえ、かりにそこで滑っても、奈良でくい止めることができる。
京都は人気修習地なので、第二位で書いても意味がとぼしい。
奈良は、奈良自体のキャパは小さいが、大阪にも京都にも1時間以内に出られるうえ、名古屋へのアクセスも悪くはない。
関西で就職したい修習生のためにあるような修習地である。
もし、神戸を見切ってもいいのであれば、
①大阪②大津③奈良④岡山
ということで、神戸と大津と入れ替えてしまうと、さらに有効だ。
大津は、大阪、京都、名古屋、いずれの地域にも就職活動圏内である。くわえて、まだ牧歌的な、古き良き司法修習の名残があるので、居心地もよい。
伝統的に大津は、とくに京都大学出身者の間では「穴場」とされてきた歴史的経緯があった。
最近の修習地改正により、東京、大阪と同レベルの「1群」に昇格してしまったことは残念ではある。
なお、同じ近畿地方であっても、和歌山は避けるべきだ。
大阪まで出るのに直通がきわめて少なく、2時間かかるため、大阪で就職活動をすることがきわめて困難である。
和歌山よりむしろ岡山の方が、新幹線がつかえるので平日の就職活動が可能な分、有利である。
岡山は、新幹線を使う前提であれば広島、神戸、福岡、京都にも就職活動が可能であり、意外とシブイ働きをする修習地である。
名古屋高裁管内の場合
名古屋高裁管内の場合、
岐阜と三重のどちらをとるか、ということであれば、岐阜をとるべきだ。
三重は、名古屋が就職活動圏内にはなるが、関西、関東の就職活動には不利になる。
一方で、岐阜県は、名古屋だけでなく、新幹線を使う前提であれば、関西や関東の就職活動にも十分に対応できる。
また、岐阜県自体が、これから弁護士として独立するのであれば、かなり有望な地域と評価されており、そのまま岐阜県で就職してもよいくらいの好立地である。
同じ名古屋高裁管内 といっても、石川県、富山県、福井県は、都市部に就職活動するには、大きな障壁がある。
関西、名古屋の修習地選択については、吉田が、かつて大阪に住んでいたことがあるので、このように、具体的にアドバイスをすることができる。
関東の修習地選択については、吉田は、土地勘が薄いのでアドバイスが難しい。
関東の修習生からのアクセスも多いので、書いてあげたいのは山々であるが、これは、吉田が大阪に地縁があるから、という理由なので、運命だ。
あきらめてくれたまえ。
ただ、関西での論理を関東に適用すれば、 「東京で就職活動をする」 という目的に最適のラインナップは、
①東京②さいたま(千葉)③水戸④前橋
というあたりであろうか。
横浜を二位に書いても意味がない。
あるいは、就職活動には、関東特有の、新幹線密集地という強大なチカラを借りて
①東京②さいたま(千葉)③新潟④長野
というラインナップも考えられる。
また、不人気修習地、たとえば、島根、青森、宮崎、などを第8位希望でも書いてしまったら、「希望しているから…」という理由で、島根、青森、宮崎、に配属される可能性がある。
まあ、考えるのが面倒になったのであれば、高松修習とでも書いておけば、考える悩みからは開放される。1年中晴れているし、気候は温暖だし、災害は少ないし、うどんは美味しいし、いいところだよ、香川県は。阪急デパートはないがね。
都市部での就職活動にきわめて不利であるのは、
島根、鳥取、福井、という日本海側、
松山、高知という四国の南西部(香川、徳島は大阪の就職活動圏内)、
宮崎、鹿児島、沖縄である。
ただし、検察官、裁判官になりたいなら、地方修習が断然有利だ。
というのは、修習生の数に比べて、指導してくれる立場の人間が充実しているからだ。
ときには、直接担当していない検察官、裁判官が、わざわざ修習生にかまってくれたりする。
また、検察官の世界では、検事正というのは、一都道府県にひとつしかないポジションで、大変にエライ存在であるのだが、検事正が修習生と飲んでくれたりすることもあったりする。
検察官、裁判官という進路を決めている人は、地方修習にするべきだ。