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独立・開業

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自分は今,独立開業が可能なのか?

独立をするときに,最初に考えるべきなのか,
自分が「今」独立することが可能なのかどうか,ということです。

「いつかは」独立をする,というのは,弁護士であれば,それほど難しいことでもありません。ベテラン弁護士の大半は独立をしているものです。
根暗でも気弱でも,ブサイクでもバカでも,独立している弁護士は多いです。
「自分は絶対に独立しても成功できない」
ということは,絶対にありませんから,この点では,安心してください。

ただ,「今」の状態で独立できるかどうかは,また,別の問題があると思います。
私が思いますに,弁護士経験が5年あれば,独立してやっていくことも十分に可能だと思います。
弁護士業は,特殊な事件を別にすれば,最初の5年の間に,ひととおりの種類の事件を経験するものです。
また,経験していない事件であっても,すでに経験した他の事件の応用で,なんとかやっていけるものです。
ですので,弁護士経験5年あれば,少なくとも,第一段階である「そもそも自分は,今独立開業できるかどうか」というハードルについては,クリアできていると思います。

実務経験が5年以下の場合では,どうでしょうか。
実務経験が3年の場合ですと,「そもそも自分は,今独立開業できるかどうか」は,人によるところがあるかと思います。
ロースクールからストレートにきた人であっても,独立志向の強い方,弁護士になったのであればいずれは独立したいと,もともと思っていた方であれば,エイヤッ,と独立してしまうのも,いいのかもしれません。
また,弁護士として,というよりは,人間として熟成している方,あるいは,人間としての成長の早い方であれば,3年くらいで独立というのも,ひとつの考えだと思います。

何がキーポイントになるか,というところですが,吉田が自分の経験に照らして言えば,独立できるのかどうかというのは,弁護士としての仕事の能力の問題ではないと思います。
弁護士としての仕事の能力が高かろうが低かろうが,独立して立派に仕事をしている人はいるわけです。
弁護士としての能力がいま一つ,というところであっても,
「やらなきゃしょうがない」
という状況になれば,人間は,意外と,やれてしまうものです。

ですので,独立するかどうか,というのは,仕事の能力よりも,むしろ,
孤独に耐えられるかどうか
一人で決断することに耐えられるかどうか
がキーポイントになってくると思います。

どういうことかと言いますと,独立して事務所を構えると,何事においても自分が最終的な判断者になります。
今までは,どんなボスであっても,一応,自分の上司がいましたから,裁判所に提出する準備書面について,
「はい,ボス,チェックしてくれましたね。じゃあ出しておきますよ」
ということで,わりと気軽に裁判所に出すことができました。
つまり,最終的な責任はボスがとっていてくれたわけです。
かりに,その書面が失敗作であったとしても,責任をとるのは,ボスであって,アソシエイトではないのです。

提出した書面に責任が発生する,ということは,じつは,けっこう重いことなのです。
独立したあとになって,その重みを初めて実感するかもしれません。
独立したあと,裁判の書面を書くときに
「本当に,この書面を出していいのか」
「なにか,重大な間違いをしていないか」
「自分のせいで裁判に負けたらどうしよう」
という不安が,どうしても浮かんでしまうものなのです。
そういうときになって,はじめて,
「ああ,書面というものは,書くだけでは,まだ半分でしかなかったなあ。この書面について責任をとるという覚悟ができるかどうか,そこまでカバーできて,はじめて一人前だ」
ということがわかるのです。
もっとも,それは,ボスの庇護を離れたときに,はじめて理解できるのかもしれません。

自分が事務所の経営をする立場になったときには,裁判のことだけではなくて,
事務所の物件を,どこに決めるのか
誰を採用するのか
事務員の給料をどうするのか
内装はどうするのか
という,まさに,事務所の全てのことについて,自分で決めなければなりません。
ある意味,「全てのことを自分一人で決定したい」という欲求が,もともと強い人にとっては,独立開業は,まさに転職といえるかもしれません。
逆に,自分一人で決断することが怖かったり,あれこれと失敗することをおそれてしまう人は,独立しない方がいいかもしれません。
ですから,独立するかどうか,というのは,頭の善し悪しの問題というよりは,自分でなんでも決めたいと思うのかどうか,まさに「独立したいと思うのかどうか」という「性格の違い」によるものだと思うところです。