テナント物件の考え方
事務所を開くときに、テナント物件をどう選ぶのかということは、とても重要な問題である。
テナント物件を選ぶというのは、事務所を設立するときの最初の課題である。
テナント物件を決めることができれば、事務所の設立は、一気に具体化する。
そして、テナント物件を探している間というものは、事務所設立が一番に楽しい時期でもある。
夢が広がる気持ちがするのである。
「喜びとは成功それ自体ではなく、成功するまでの努力や苦闘の中にある」(マハトマ・ガンジー)
ただ、夢が広がるあまりに、テナントを選ぶときに、さまざまなことを同時に考えると、頭がゴチャゴチャしてしまって、結局何も決められなくなったり、逆に、何も考えずにフィーリングだけでテナントを決めてしまったりしてしまう。
まずは大きなところから考える
ここは、他の多くの物事と同じであり、大きな要素から最初に決めて、だんだんと細かい話を詰めていく、という順序をたどりたいものである。
そうすると、大きな順番に、以下のように考えてみてはどうだろうか。
どの駅の物件を探すのか?
↓
駅からどういう距離の物件を探すのか?
↓
どういうビルが良いのか?
↓
どういう部屋がいいのか?
↓
どういう条件(賃料含む)がいいのか?
という順序で考えていくと、考えやすいのではないかと思う。
どの駅の物件を探すのか?
最初に、そもそも、どういう場所に事務所を出すのか、ということを考えるべきである。
多くの弁護士は、裁判所の近くに事務所を出すことを考えるが、それでいいのかどうか?という視点を一度は持ってみよう。
というのは、裁判所の近くに事務所を出すというのは、あくまで「弁護士にとっての都合」に過ぎないのだ。
顧客にとっての都合を考えたことがあるだろうか?
「裁判所の近くは弁護士事務所だらけで、雰囲気が変」
「裁判所の近くは、地下鉄から遠くて、行きにくい」
「裁判所の近くは駐車場がなくて行きにくい」
「裁判所の近くは、一方通行が多くて、入りにくい」
というような一般ユーザーの意見を一度は聞いたことはないか?
「友達が出しているから」「みんながそうしているから」という安易な気持ちで裁判所の近くに事務所を出すことに対しては、私は疑問を覚える。
他の選択肢も全て考えたうえで、どこに事務所を出すかを考えるべきだ。
都市部の場合
東京、大阪、名古屋などの都市部の場合には、全ての駅ごとに、法律事務所を出せる可能性があると考えるべきだ。
その駅の乗降者数と、その駅の周囲に法律事務所がどれだけあるのかを比較して考えて、法律事務所がまだ少ないのであれば、選択肢に入れて良い。
ただし、都市部の場合、「良い立地」は、すぐにマネされる。
今は競合が少ない駅であっても、将来的には後続の事務所が進出してくるという可能性は考えておくべきである。
地方の場合
その他の地方の場合であっても、県庁所在地以外の、二番目に大きな都市、三番目に大きな都市は、まだまだ弁護士が少ないことがある。
東京では若手弁護士が疲弊していても、少し田舎の、それなりに人口の多い第二都市で開業した弁護士は、仕事が山ほどあって左うちわ、ということもよく聞く話である。
現在は東京で勤務弁護士をしていても、たとえば、自分の出身県、修習地、妻の実家のある県など、地縁のある場所を選択肢として考えても良い。
また、全く地縁がなかったとしても、はっきり言って別にかまわない。
自分が事務所を出したいと思った場所ならば、
そこに出して何が悪いというのか。
事前に縁などなくても、事務所を出してしまえば、自然と縁はそこから出来てくるものだ。
自分が「そこに事務所を出したい」と思ったこと、それ自体が、もっとも強力な「縁」ではないだろうか。
人生には、しばしば、傲慢かつ強引に、荒海を押し渡っていかなければならない時がある。
今がその時だという直感が働いたならば、日本国中、どこでだって事務所は開ける。
断じておこなえば、鬼神もこれを避けるという。
駅からどういう距離の物件を探すのか?
都市部であれば、顧客の導線は駅を中心としているであろうから、駅に近いビルに事務所をつくのが無難である。
駅に近い場所でないならば、せめて、駅からの道順を口で説明できる範囲のテナントが良い。
また、ビルの一階に目印になるようなお店、たとえば、コンビニ、ドラッグストア、有名なチェーン店が入っているならば、目印になるから良い。
一階の コンビニ、ドラッグストア、有名なチェーン店が、お金をつかけて作った、店舗の案内図を、そのまま、自分の事務所の案内図として流用してしまえばよいのだ。