事務所の名称の結論
【注意】本記事において事務所の名称についてさまざまな評価をしていますが特定の事務所の名前に否定的な評価をする意図は全くありません。
さて、今まで、事務所の名称について、さまざまな観点から論じてきた。
法律事務所の名称について、ここまで詳しく論じた事例は存在しないと自負している(笑)。
そのうえで、「正しい事務所の名前の付け方は?」に結論を出したいと思う。
まず、いままで論じてきた、事務所の名称の付け方のメリットとデメリットを一覧しよう。
自分の名前から事務所の名称を付ける
メリット1 自分が代表者であることを自然とアピールできる。
メリット2 本物感がある
デメリット1 他の弁護士と共同経営する場合には名称の変更が必要となることが多い。
デメリット2 共同経営者が増えてくると名前が長くなる
デメリット3 アソシエイトが代表者ではないことが顧客に容易にわかってしまう
地名から事務所の名称を付ける
メリット1 メジャー感を演出できる
メリット2 地名の独占効果
デメリット1 類似した名前の事務所が多い
デメリット2 引越すると事務所の名称と実際の住所が矛盾する可能性がある
名前・地名以外の抽象的な言葉から事務所の名称を付ける
メリット1名称を短くできる
メリット2? 事務所の理念やイメージを打ち出せる?
デメリット1 失敗しやすい
以上のメリット・デメリットを一覧すると、結局、事務所の名称の付け方は、事務所の現在の状況や、代表者が事務所をどうしたいのかによって、「その人にとっての正解」が決まってくるのではないかと思うのだ。
正解1 経営者1人で最後までやるつもりならば個人名が正解
個人名から付けるメリットは大きい。そして、個人名から付ける場合のデメリットの多くはパートナー弁護士が増加してきた場合の話だ。そうだとすれば、最初から最後まで一人事務所を予定しているのであれば、個人名から付けるのが一番効果的だ。
正解2 事務所の立地を最大限に生かすなら地名が正解
かなり考え抜いて事務所の立地を決めた場合、都市部から地方にIターン的に移転したような場合など、開業する場所を成り行きで決めたのではなく「その立地が重要だ」というケースの場合には、立地の効果を100パーセント引き出すためには、事務所の名前も地名に合わせるのが効果的であろう。
とくに、その立地で他に地名を使った事務所が全く無いような状況なら、「本家」として地名を使えるので効果が高いと思われる。
正解3 大規模事務所にしようと考えているのであれば、抽象的な名称から付けるのが正解
抽象的な名称の最大のメリットは「名称を短くできる」ということである。
単純に思うかもしれないが、「誰の名前を事務所名に出すのだ?」という点についての内部抗争や事務所の分裂を回避できるという点で、すぐれた政治的妥協なのだ。
もし、自分が最初から将来はパートナー制の大規模な事務所にしようと考えているのであれば、最初に事務所を開くときから、あえて個人名を避けて抽象的な名称の事務所名にしてもいいかもしれない。
さて、事務所の名称論の結論としては「正解は人による」ということになった。
事務所の名称を、あれこれ考えているときは、これから長く続く事務所の歴史の中で、ひょっとしたら一番楽しい時間なのかもしれないのである。
なぜか不思議なことに、悲惨な体験や、ひどい経験を死ぬほどしてきたというのに、人間というものは、未来のことを考えるときには、必ず希望に満ちているものらしい。