思うほど重要でない要素
●司法試験の成績
司法試験の成績は、書類選考の時点での足切り要因となる。面接まで進んでしまえば、もはや過去の話なので問題にはされなくなる。
したがって、成績が悪くても、自己PRなどで挽回して面接までこぎつけてしまえば、差は解消されると考えてよい。
実際、私も,過去,100人から200人ほど面接してきたが,その経験を踏まえると,司法試験の成績と法律的な実力は必ずしも比例しないと感じている。
それはなぜなのか,という点は疑問なのだが,おそらく,法科大学院で教えている内容と司法試験の問題が,マッチしていない,という点が大きいのではないだろうか?
法科大学院で優秀な成績をおさめている,ということ自体は,いいことだと思うのだが,それに慢心していると,司法試験では,形式の違いから,思わぬ成績をとってしまう,という悲劇がおこっているのではないだろうか?
ということを想像している。
●法科大学院
いわゆる有名法科大学院が書類選考で有利なのは間違いない。ただ、これも司法試験の成績と同じく足切り要因なので、面接までこぎつけてしまえば、差は解消される。
ただ、たしかに、私の経験では、出身の法科大学院と、法律的な実力・法律以外の分野の教養・思慮深さ、などの要素は比例していることが多い。
もっとも,どこの世界にも例外はあるもので,有名法科大学院の出身であっても,バカだったり,無気力だったり,常識がなかったり,エラソウだったり,かわいげがなかったりすると,トップの法科大学院でも,やはり面接に落ちるものだ。
●出身大学
東京大学と京都大学の出身者であれば,とりあえず,書類選考だけは通るのではないかと思う。
もっとも,有利なのは書類選考だけのことであって,面接から先は,その人の人間的な魅力がものをいう世界となる。
学歴が幅をきかせる世界は,書類選考までで終わるのである。
実社会でも,おおむね,そういう傾向がある。
それ以外の大学であれば,とくに,出身大学で違いがあるようにも思わない。
吉田は早稲田の出身だが,早稲田はバカばっかりだということは,学生時代によく知っているので,べつに,早稲田だから優遇しようとも思わない。
自己PR文での勝負となるだろう。
まとめ
東京大学,京都大学卒→とりあえず面接へ
それ以外→自己PR文での勝負
●何回目合格か
一応、自分と自分が聞いた範囲では、
1回目合格と2回目合格には差がない。3回目合格とは差がある。
と認識されている。
ただ、これも足切り要因であり面接以降は問題とはならない。重要度としては、司法試験の成績、出身法科大学院よりも下だと思う。
ひょっとしたら,受験生の中には3回目合格だと自己卑下する人もいるのかもしれないが,採用する側としては,必ずしもそうは考えてはいない。
採用する側から見ると,年齢が高いというのは,悪いことばかりでもない。
同じ年収で,25歳の人を採用するのと,28歳の人を採用するのであれば,28歳の人の方をとりたい,という弁護士は多いと思うのだ。
たしかに,ロースクールの同期が早く合格するなか,3年間必死で勉強して,ようやく合格した,という人は,抜群の頭脳ではないのかもしれない。
しかし,弁護士の仕事は,別に,抜群の頭脳が必要というわけでもない。
むしろ,人間関係の作り方とか,根性だとか,何回ダメでも立ち向かうという不屈の精神だとか,めげない精神的なタフネスさとか,そういう,頭脳ではなく,精神の方が大事だったりする,そういう一面も,たしかにあるのだ。
バカでも根性がある,ということであれば,それを積極的に評価する弁護士は多く存在している。
また,
「一番早く応募してきた人を採用する」
「今年は女性を採用する」
「おれと酒が飲めるやつなら採用する」
「ゴルフができるやつなら採用する」
「四柱推命で占って相性がよければ採用する」
「優しい性格の人なら採用する」
などという,独自の採用基準をもっている弁護士もいたりする。
そういうふうに,修習生が思っているよりも,採用する側の評価というものは,けっこう,事務所ごとに独自であったり,柔軟性があるものなので,
「成績が悪いから就職できない」
「3回目合格だから就職できない」
と,勝手に決めつける必要もないと思うところである。
●ブサイク男子,非美人女子
大手渉外系の法律事務所に採用された人をみていると,
「顔で選んでいるではないか?」
と思うほどに,美男子,美女ばかりだったりすることがある。
そうすると,弁護士の世界も,イケメン,美女が有利なのか?と思われるかもしれない。
結論からいえば,たしかに,美女は有利だ。
一方,美男子が有利かというと,そうではないように思う。
というのは,弁護士の業界では,とくに若手の場合には,
おっさん顔の方が有利
という面があるからだ。
とくに,裁判所以外での交渉事の場合には,ベテランであると思われた方が有利なことは多い。
したがって,イケメンでなく,おっさん顔であることは,むしろ有利なことなので,最大限に利用するべきである。
デブはどうか?という点については,
服を着ていれば,マッチョとデブは,区別がつかない
という偉大な格言があるとおり,多少のデブなら,むしろ,体格が良いと思われて,お得かもしれない,という面もある。
背筋をピシッと伸ばして,スーツを着ていれば,デブは,わりと貫祿があって立派にも見える。
●雄弁か口下手か
いわゆる「弁が立つ」という人を面接することはあるが、思うのは「あまり論理的でなく、関係のないことを大きな声でしゃべっている」ことをもって雄弁と認識している人が一定数いることだ。そういう話し方は、頭が悪い話し方の典型なので、むしろマイナスである。
逆に、口数が少ないタイプで、一言一言に思慮深さがある人は評価される。
なお、世間では、弁護士は雄弁な印象があるのかもしれないが、大半は口数の面では平均的である(もちろん、一言の重みは世間一般とは異なる)。一般的な会社の営業職の方が口数自体は多いかもしれない。裁判官は、弁護士の前では無口な人が多い。
●法科大学院の成績
司法試験の成績、法科大学院名よりも優先順位が低い。見ないことはない、程度か。
そもそも、法科大学院によって、「A」「83」「優」など、評価方法がまちまちで、しかも、評価の合計がされていないことが多い。
一言でいえば、法科大学院の成績表は、採用側にとって不親切である。
事務所側で評価の合計を算出できないこともないが、そのような手間ヒマをかける理由が見いだせない。
●TOEICなどの成績
海外法務をおこなう事務所では重要だと思われる。ただ、国内や個人法務の仕事が多い事務所では評価の対象外。