自分から電話をした場合

弁護士「もしもし、Ａさんでしょうか。弁護士の吉田です。いま、お電話大丈夫でしょうか」
依頼者「あ、はい、Ａです」
弁護士「本日、裁判がありまして、相手の弁護士からは、和解金３００万円を支払う、という提案がありました」
依頼者「はい」
弁護士「私としましては、３００万円というのも悪くないところだとは思うのですが、あまり簡単に受けてしまうと、なめられるかもしれませんから、あえて３５０万円にしてくれないか、と主張しようと思います」
依頼者「なるほど」
弁護士「どう思われますか？」
依頼者「弁護士さんにおまかせしていますから、弁護士さんがいいと思う方向で対応してください」
弁護士「わかりました。では、３５０万円で一回、押してみましょう。もし、向こうが、３５０万円ではイヤだ、と反論してきたら、真ん中をとって３２０万円くらいというのもひとつの考えだと思います」
依頼者「なるほど」
弁護士「あと、次回の裁判の期日ですが、約１カ月後の３月１４日になりました」
依頼者「わかりました。ご連絡ありがとうございます」

電話が終わったあとの依頼者の感想
依頼者「この弁護士さんは、自分が知りたいことを、的確に教えてくれた。自分は、ただ、聞いているだけでよかった。頭がよくて、信用できる、信頼できる弁護士さんだ。新人だと聞いていたが頼もしい人だ」

依頼者からの電話を受けた場合

依頼者「もしもし、Ｂ弁護士さんはいらっしゃいますか」
受付「はい、どちらさまでいらっしゃいますか」
依頼者「裁判の件でお世話になっているＡです」
受付「はい、少々、お待ちください」
（保留音）
弁護士「はい、弁護士のＢです」
依頼者「もしもし、Ａです」
弁護士「はい、Ａさんですね、本日、お電話いただきましたのは、どういうご用件でしょうか」
依頼者「ええ、今日の裁判の結果がどうなったのか知りたくて」
弁護士「ああ、今日の裁判ですね。少々お待ちください。事件の記録を出してきますから…」
（保留音）
弁護士「はい、お待たせしました。ええと、今日は、そうですね、和解の期日ということでしたね」
依頼者「はい、以前のお電話の際に、本日は、和解の話が出るとうかがっていました。相手からは、どういう提案があったんでしょうか」
弁護士「ええと、相手からの提案ですね。少々、お待ちくださいね。…」
依頼者「……」
弁護士「はい、えーと、相手からは、３００万円、という提案がありましたね」
依頼者「３００万円ですか」
弁護士「どうでしょうか？」
依頼者「弁護士さんとしては、どう思いますか？」
弁護士「うーん、３００万円というのは、まあ、悪くないラインだとは思います」
依頼者「上積みはできないでしょうか」
弁護士「できないこともないでしょう」
依頼者「どれくらいの上積みを主張したらいいんでしょうか」
弁護士「うーん、３５０万円くらいだったら、一度、押してみてもいいのではないでしょうか」
依頼者「なるほど。でも、私は今回の件は和解で終わらせたいと思っていますので、もし、３５０万円と言うことで、向こうが怒るようだったら困るんですが…」
弁護士「まあ、怒ることはないでしょう。向こうも和解をのぞんでいますから」
依頼者「わかりました。では、３５０万円で主張してください」
弁護士「了解です」
依頼者「ところで、次回の裁判は、いつでしたったけ」
弁護士「ええと、ちょっと待ってくださいね……」
依頼者「……」
弁護士「はい、えーと、２月２０日ですね」
依頼者「えーと、すいません、それって、今日じゃないですか？」
弁護士「あ、ごめんなさい、あわてていたもので、今日の裁判の日付を言ってしまいました」
依頼者「すいませんね、あわてさせてしまって」
弁護士「いえいえ、とんでもない。えーと、次回は、３月１４日になっています」
依頼者「わかりました」
弁護士「よろしくお願いします」

電話が終わったあとの依頼者の感想
依頼者「なんだか、この弁護士さんは疲れるなあ。自分がしっかりしていないと、いけないのかなあ、という気になってきた。あ、そういえば、この人、新人だったんだっけ。…なるほど、ね」

どうでしょうか？

弁護士としての仕事は全く同じことをしたにもかかわらず、依頼者の満足度には大きな差が出てしまいます。

こういう点に敏感になれれば、ベテラン弁護士の資格あり、です。