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本音を引き出すマジックワード

The first legal-aid-services manual

弁護士

弁護士も経験を経てくると、自分が直接には知らない事柄であっても、少なくともウソにはならず、また、相談相手に有益なアドバイスができるようにもなってきます。

 

たとえば、相談者の方から、
「マンションの区分所有に関する法律について、私が調べたところでは、これこれ、こういうことのようですが、本当でしょうか?」
というような相談がされることがあります。

 

弁護士なら法律はなんでも知っているわけではありません。
民法や刑法なら、ほとんど、なんでも知っていると言ってもよいでしょうが、世の中には、特別法が星の数ほどあります。
弁護士であっても知らない法律は、いっぱいあるのです。

 

でも、そういう、自分の知らない法律についての相談をされても、たとえば、ベテラン弁護士は、このように切り返すでしょう。
「とてもよく勉強をされているのですね。すばらしいと思います」
「ところで、今回、弁護士にご相談をしようと思われたのは、なにか、お困りのことがあるからではないでしょうか。まず、どのようなことで、お困りなのでしょうか?」
こういう質問をすると、依頼者の表面的な質問ではなく、依頼者が悩んでいる根源的な問題を引き出すことができます。

 

弁護士に相談をしようという人は、100%、「なんらかの悩み」があるから、相談にきているのです。
全く困っていないにもかかわらず、純粋に、マンションの区分所有権について興味関心があったから弁護士に法律的な見解を確認しにくる人はいません(笑

 

ですから、
「どういうことで困っているのですか?」
という質問は、相談者の本質的な悩みをつかむうえでの、マジックワードのようなものです。
そして、相談者の「困っていること」について聞いていくと、
相談者の本来の悩みは、区分所有の問題というより、
「マンションの隣の住民が夜中に騒いで、うるさい」
とか
「ペット禁止のマンションなのにペットを飼っている人がいる」
というような、理解しやすい悩みであったりします。

 

法律相談をしていると、
質問されている言葉を表面的に理解すると、理解不能な質問、趣旨が不明な質問、というものが、よくあるものです。

 

でも、相談者が、そういう質問をした理由を聞いていくと、「相談者が本来するべきであった質問」というものを掘り起こすことができるでしょう。

 

そうして、「相談者が本来するべきであった質問」の方が、理解しやすいですし、弁護士としても回答しやすいものです。

 

そういうふうに、相談者が、自分では気づいてはいない質問を推測することができるのが、ベテランの弁護士というものです。