成績は思うほど重要ではない
法律事務所への就職にあたっては,司法試験の成績が重要だと思う人が多い。
たしかに,大手法律事務所では,面接をする前段階として,一定以上の成績を求められる傾向はある。
ただ,一部の大手事務所以外では,司法試験の成績のウエイトは一般に思われているほどに高いものではない。
書類選考のウェイト
吉田の調査では,書類選考の段階,すなわち,面接に呼ぶかどうかを決めるときのウエイトとしては,
自己PR文の内容…40%
司法試験の成績…25%
学歴…25%
運…10%
という印象である。
ここから言えることは,
「自己PR文は,受験生が思っているよりも,かなり重要」
「自己PR文をいい加減に書くと書類選考で落ちる」ということである。
最終選考のウェイト
また,最終選考の段階,すなわち,採用活動の最終段階において,複数の候補者を,一人か二人にしぼる段階でのウェイトは
面接の結果…60%
選考で出された課題…20%
学歴…5%
司法試験の成績…5%
運…10%
という印象である。
言うまでもなく,面接の結果のウェイトが非常に大きい。最終選考の段階では,司法試験の成績も,ロースクールも,もはや,どっちでもいいくらいのウェイトしかなくなっている。
このウェイトをみると,おそらく,司法修習生は驚くのではないかと思う。
ただ,この数字は,何人かの事務所経営弁護士に聞いてみたが,
「だいたい,そういうところだと思う」
という確認を得ている。
私が見るに,
司法修習生は,司法試験の成績の良し悪しについて,必要以上に敏感にすぎるように思う。
成績が良かった者は,鬼の首をとったように得意気になっており,成績が悪かった者は,
「就職できないんじゃないか」
と,ずいぶんと卑屈になっていることが多い。
ただ,司法試験の成績は,書類選考段階では,自己PRよりも下位の存在であり,最終選考段階では,もはや記憶されていない。
したがって,以下のことを提唱したい。
司法試験の成績が良かったとしても,それは採用の決定的な要因とはならないのであるから,けっして,高慢になってはならない。
司法試験の成績が悪かったとしても,それだけで採用が決まってしまうわけではないのであるから,逆転にそなえて,必死に努力をするべきである。
成績が悪かったことを後悔するな
「成績が悪かった」として,それを悔やんだら成績が変わるだろうか?
悔やんでも成績は変わらない。
「成績が悪かった」として,もう一度見たら数字が上がるだろうか?
何度確認しても,数字は上がらない。
過去は,上流から下流に一筋に流れる川の流れ。
時間の川を,さかのぼることはできない。
では,負けた人間は一生負けたままか?
そんなことはない。
時間をさかのぼらなくても,負けた人間が勝つ方法がある。
簡単なことである。
また戦えばよいのだ。
勝った人間が浮かれて油断をしている間に,
負けた人間は,不屈の闘志をもち,情報を集め,チカラをたくわえ,勝つ方法を考えるのだ。
成績で負けたならば,渾身のチカラで自己PRを書き上げればよい。
最初に負けていた側が,必死にがんばって奇跡の逆転をしたことなど,人類の歴史には,いくらでも例があるではないか。
負けた人間は,また戦える。
負けた人間は,次に勝つことができる。
泣くな。復讐しろ。