就職活動の心構え
1 就職活動をしていると落ち込むものです
人間は、他人に拒絶されることを本能的に嫌うものです。
とくに財産的な損害が発生していないにもかかわらず、拒絶されることを嫌がります。
これは、人間の本能からくるものなので、しょうがないことです。
あなただけでは絶対にありません。
世の中の人間の、ほぼ100パーセントが、できることなら、他人に拒絶されたくないと思っています。
しかし、「拒絶されるのがイヤ」と言っているだけでは就職活動は始まりません。
就職活動というものは、10回や20回、エントリーシートを出しても、一度も面接まで行けないということなど、当たり前に発生します。
多くの司法修習生は、
「就職活動というものは、こんなにも、うまくいかないものか」
と思って、ショックを受けることが多いのです。
司法試験に合格するような人は、やはり、母集団として、エリート層です。
普通の人よりも、「うまくいった経験」「受け入れられた経験」「すごいね!と尊敬された経験」を多く持っているものです。
でも、「みんながエリート」という、こういう修習生の就職活動においては、競争相手も全員エリートであるため、
「何回やっても拒絶される」
という、自分にとって、今までなかった経験をすることになるのです。
何回やっても面接で拒絶された場合、だんだんと、人間は
「まるで、自分の全てが否定されたような気分になる…」
と感じて、気持ちが落ち込んできます。
拒絶されることにより精神的なショックを完全になくすことはできません。
あまりにも精神的な落ち込みが大きくなると、やる気をなくしてしまって就職活動を断念することになります。
そうなってしまうと、就職活動を続けることができません。
ですから、就職活動を健全に続けるためには、拒絶による落ち込みを最小限度ですませるように、
ダメージコントロール
が必要になります。
2 どうしたら落ち込みを少なくできるか
どうしたら、拒絶されることによる精神的な落ち込みを少なくできるでしょうか。
ここは、気持ちの持ちようが大事です。
一つ目は
拒絶されて落ち込んでいるのは自分だけではないことを知ること
です。
就職活動をしている同期と積極的に連絡をとりあって、就職活動に関する情報交換を積極的におこないましょう。
そうすれば、拒絶されて苦労しているのは自分だけではないこと、落ち込んでいるのは自分だけではないこと、が自然とわかります。
「自分だけではない」ということを知ることで、わりと気持ちが楽になります。
もっとも、あまりに気持ちが楽になりすぎて、
「なんだ、就職活動でうまくいかないのは、むしろ当たり前よね~」
というように、
負けて当然
と思うようになると、それはそれで困ります。
あまりに低レベルな集団だけでつるんでしまうと、精神的には楽かもしれませんが未来がありません。
負けることを前提として行動するような人たちは、
落ちこぼれ
と呼ばれる集団です。
近寄ってはいけません。
バカがうつるからです。
自分よりも優秀な人の集まっているグループに参加させてもらって、良い刺激をもらうことが必要です。
3 落ち込みを少なくする方法の二つ目は
プラスをしょって帰ること
です。
ぼくの同期のK弁護士は、非常に哲学的な方ですが、彼が言うには、幸福になるためには、
つねにプラスをしょって帰る
ということが大事なのだ、ということです。
しょって、というのは、背負って、という意味合いですね。
これは、とても深い名言です。
「つねに」という点がポイントです。
就職活動であれ、なんであれ、行動すれば、必ず、うまくいくこともあれば、思ったとおりにはいかないこともあります。
それでも、「つねに」プラスをしょって帰ることができるのは、なぜでしょうか?
それは、一般には「失敗した」という状況であっても、なにか一つはプラスになるようなものを発見し、それを喜ぶという心があるからです。
どのようなひどい失敗であっても、
「そういう失敗をするという経験をもらった」
というプラスを発見することができるのです。
そもそも、就職活動で、最初の面接で一発合格することなんて、ほとんどないのです。
就職活動に参加させてもらえたこと、面接に参加させてもらえたこと、そのこと自体に対して、
自分に就職活動の練習をさせてもらえてありがたい
今回面接させてもらえたことで、一歩成長した
というプラス面を発見し、プラスをしょって帰りましょう。
また、たとえば、修習地の選択で、志望東京には残れずに、たとえば青森修習となってしまった、という場合であっても、「東京に残れなかった」というマイナス面を見るのではなく
「今まで青森に住んだことはなかったから、新しい体験ができてラッキー!ねぷた祭りも、かぶりつきで見られるし!」
というプラスをしょって帰ることで、幸福を感じるのです。
人生に発生する、さまざまな出来事には、プラス面とマイナス面があります。
マイナス面に着目して落ち込むこともできますが、
一方で、プラス面に着目して幸福を感じることもできます。
エライ人になったり、歴史に名を残すような人は、そもそも生れ持った精神的なタフさもあるかもしれませんが、
失敗したことを「一歩前進した」と解釈し、
負けた経験であっても「経験を得た」と解釈する、
という、プラス思考の思考回路をもっていたに違いありません。
自分の人生の浮き沈みを
「成功したあとに失敗ばかりで悲惨な人生だ」
と思うこともできるかもしれませんが、
「山あり谷ありで、なんとエキサイティングで面白い人生だ」
と思うこともできるでしょう。
人間は、同じ人生であっても、
どちらに解釈することもできるのです。
他人が見たら悲惨と思うような出来事でも、本人は幸福を感じているのかもしれません。
それが人間に与えられた「解釈するという能力」の偉大さです。